
ABOUT

2017年7月、岡山県倉敷市北部に位置する旧林家住宅(現・西口邸)が国登録重要文化財に指定されました
岡山県倉敷市に建つ旧林家住宅は、1923年(大正12年)、倉敷紡績の取締役として大原孫三郎の元で働いていた林佳二郎が、当時の著名な文化人であり建築家でもあった西村伊作に依頼して建てられた英国風の品格を漂わせる2階建ての洋館です。
建物は高粱川の近く、祐安(すけやす)の高台に300坪以上のゆったりとした土地に設けられ、5月にはサツキの花が美しく邸宅を彩ります。
現在も建築当時の姿がほとんどそのままに保存されています。
第二次世界大戦時には疎開先に、終戦後は連合軍に徴収され占領軍司令官の住まいとしてオーストラリア人家族の邸宅となり、その後三菱重工の社宅を経るなど多彩な歴史を刻んできました。現在は西口友子氏に引き継がれ、西口邸となっています。
※岡山県倉敷市有形文化財「旧林家住宅(現・西口邸)は、現在は一般向けに公開しておりません
サツキの花が咲く5月の旧林家全景

左:林佳二郎とその家族
背後は当家である(1920年代後半撮影)

右:西村伊作(西村記念館を守り伝える会HPより)
建築家・西村伊作−−−封建的生活を打破した現代住宅の祖
西村伊作(1884〜1963)は、文化学院(東京都墨田区)の創立者であり、大正・昭和期を代表する建築家・画家・陶芸家・詩人でもありました。
濃尾地震で両親と死別したのち、アメリカ留学から帰宅した父の弟で医師・大石誠之助宅に身を寄せたことで米国の自由でモダンな文化や社会主義に触れ、それが彼の活動や作品に大きく影響を与えたとされています。
22歳のときに当時米国で流行していたバンガローを和歌山県新宮に建築。当住宅はそれまでの「接客中心」という封建的な住居形式ではない、家族みんなにとって居心地のいい「家族本位」の形式を重視しており、日本で初めての〝居間〟を中心とした住宅といわれています。
これが、今我々が当たり前のように暮らす現代住宅の祖型になりました。
伊作は「楽しき住家」をモットーにその後も設計竣工に取り組み、市民の生活改良や自由を訴える大正デモクラシーの象徴となりました。
伊作による設計建築物は、当邸宅を含み18作品が現存しています。

GALLARY


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食堂の外観。野石整層積の造りで英国風を思わせます。2階上部に覗くのは日光窓です(写真4)。窓枠は修理や塗替えの跡がありますが、ほぼ当時の姿と考えられます。
暖炉から伸びる石造煙突が、長らくこの土地で暮らす人々のランドマークとして親しまれてきました。
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現在の玄関前。佳二郎の家族写真(ABOUT掲載)と見比べてもほぼ当時の様子を残していることがわかります。面取りを施すことで丸みのある柔らかさが表現され、この家の個性が窺えます。
現代の住宅の礎を築いた、
家族本位の「バンガロースタイル」


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食堂。光を多分に取り込んだ造りで、居間とガラス戸で区切ることでより広々とした空間を演出しています。
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2階へ続く階段の踊り場。吹き抜けになった天井の壁にも窓が設けられ、斜光があたたかく差し込み、明る く照らし出す造りになっています。
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居間。1階居間と2階寝室には暖炉が設けられています。
その前に家族が集い語らう「楽しき住家」の体現で、当家の象徴的な一室です。

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当家には大小4部屋の和室があります。1階の和室には茶釜を装備しており、親しい友人たちと茶の湯を楽しんだと言われています。
現在、海外からの友人が来日・宿泊する際に使用してもらっていますが、とても好評で大活躍しています。

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和室の窓の外には日本風庭園が広がっています。四季折々の花々が咲き、季節感豊かな景色を楽しむことができます。
奥には石造の五重の塔があり、庭園のアクセントとなっています。
ACCESS & CONTACT
名称 : 旧林家住宅(登録有形文化財 33-0279号)
所在地: 岡山県倉敷市祐安1451
最寄駅: JR倉敷駅 北側2km
お問い合わせは下記のメールフォームからお願いします。
返信に数日お時間をいただくこともありますのでご了承ください
※旧林家住宅は平成29年10月27日付官報235号にて、正式に登録有形文化財として公示されました